「やばい! お財布にお金300円しか入ってない!」

「はあ? そこのコンビニで下ろして来いよ。待っててやるから。このあと紗弥ちゃんのお店行くんだろ?」

「めんどくさいから、お金貸しておいて。今度返すから」


ため息は知らんぷり。

わたしは大和を置いて、真新しいブロックの道をできるだけ大股で歩いて行く。


「しかしこの辺りも随分雰囲気変わったな。あの神社の跡地は、何ができたの?」

「おっきいマンション。公園付きの。この辺りで一番の人気物件」

「へえ……なんか、寂しいな」

「そうかな」


わたしの答えにあんまり満足いかなかったのか、大和はわたしに追いつかないまま後ろを黙ってとことこついて来た。

真新しい住宅街の中。つい最近出来上がったこの住宅街は、まだ空いている土地や建物も多い。


「大和、ここに引っ越して来たら? ほら、この家入居者募集中だって」

「俺はまだ学生だぞ。家なんて買えない」

「いいじゃん、一緒に住もうよ」

「何それ、逆プロポーズ?」

「キュンとした?」

「しない」


ちょっとくらい照れでもしたらかわいいのに、相変わらずのお顔。高校生の頃と全然変わらない。

あのときと違うのは髪が伸びたことくらいだ。大和はもう、野球少年じゃない。