「可笑しな顔だな」

「うっさいバカ。あほ。変態神様」

「泣くか笑うか怒るかどれかにしろ」

「じゃあ笑うから待ってて」


って言ってもうまくはできない。涙は止まらないから、流したまんまでにへらと笑った。

あ、ほら、やっぱり。あんたは笑ってる。


わたしとは全然違う、誰より綺麗な顔で。誰よりうれしそうに。


人の笑顔を見て、あんたは、笑うんだ。



「常葉」

「ん」

「わたし、常葉のこと好きだよ。わたしも、あんたに会えてよかった。忘れない」

「ああ」


常葉は呟いて、わたしのおでこにくちびるを寄せた。柔らかな感触。

初めて出会った日と同じだ。でも、何ひとつ、もう、同じじゃない。


あの日とは、景色が変わった。

見つからなかった道が、今はここにはっきりとある。確かなわたしの未来への道。どこまでも、果てしなく続く道。



「俺もお前が大好きだ、千世」



きっとどこまで行ったとしても、わたしはこの場所を、目印にするだろう。

いつかまた迷って、振り返っても、きっとここで手を振ってくれる人がいるから、安心して、前を向ける。



「願わくば、」



だからどこまでも見守っていて。わたしの背中を。がんばって、わたし、歩いてみるから。


ねえ、わたしの、神様。



「お前の限りない未来に、幸、多からんことを───」