見えたのは、小さな頭。それが笑顔で手を振ったのと一緒に、いくつもの頭が続けて石段をのぼってきた。
たくさんの足音。それから、笑い声。
同時に音楽が鳴り響く。みんなが一斉に声をあげる。
「ちせちゃん、みんなで来たよ!!」
その声は、七夕祭りの、はじまりの合図だった。
こんなことになるなんて、誰が予想していたんだろう。
誰もが願っていた。でも、本当にそれが実現するなんて、誰が。
始まってすぐに近所の子どもたちが大勢来てくれた。ゲームをしたり、短冊を書いたり。そこら中を走り回ってみんなでめいっぱい遊んでいた。
少しするとお年寄りも集まり出した。紗弥のおばあちゃんの演奏を聴きに来たらしい。音楽隊は一層盛り上がって、会場全体の雰囲気を明るくしてくれた。
日が暮れてくると、浴衣姿の人が増えた。紗弥が下におりて、花火に行くお客さんたちを掴まえてくれたからだ。
神社からなら綺麗に見えるしお祭りもやってる。それがどんどん広がって、見る見るうちに狭い境内がたくさんの人で溢れ返った。
どこを見ても人がいた。どこの人も、楽しんでいた。
賑やかで、盛り上がっていて。普段の神社の様子からは想像もできないくらい、たくさんの人が、ここにいた。
お日様がすっぽり隠れた頃、境内にいくつも明かりを灯した。お祭りは、これからが本番だ。あと30分もすれば空がもっと暗くなる。そうしたら、花火が始まる。
大きな2本の笹には、もうたくさんの短冊が付けられていた。それでもまだまだ、たくさん短冊の願いごとが書き続けられている。