わたしたちが神社に着いた頃には、もう随分準備のために人が集まっていた。
調理の準備が始まって、三波屋のおばちゃんが呼んでくれた金魚すくいや射的のお店もできあがっている。
「千世!!」
先に来ていた紗弥が、奥で手を振っている。わたしも振り返そうとしたけれど、それよりも先に紗弥の雄たけびが境内に響いた。
「神崎くんっ!? え、ホンモノッ!? ねえホンモノ!?」
実は、大和が来ることは紗弥には内緒にしていた。喜ぶかなあと思ってたんだけど、反応は予想以上だった。
「あの、あたし千世の友達の西沢紗弥ですよろしくお願いします!」
「あ、えっと……神崎、です」
「知ってます! 好きです!!」
「え……え?」
「あ、大和のファンなんだよ、紗弥は」
公開告白に戸惑っている大和と紗弥を置いて、準備中の境内を見て回った。
昨日付けた飾りも、きちんと綺麗に付いたまんま。いつもの神社とはまったく違った雰囲気に、なんだか心がそわそわする。
「千世ちゃん、もうすぐだね」
たい焼き屋のおじさんが声をかけてくれた。
「準備はもうできてるからね」
三波屋のおばちゃんも、自慢の品を今日はたくさん出してくれる。
紗弥のおばあちゃんたちも、他にもたくさん、わたしに協力してくれた人たち。
「みなさん」
今日のために必死で頑張ってくれた人。今日の日を、楽しみにしてくれた人。
「本当に、ありがとうございました。今日は、よろしくお願いします!」
思いを込めて、深く、深く頭を下げた。聞こえてきた拍手に顔を上げると、みんなが、笑顔でわたしを見ていた。
大きく呼吸をする。わたしも笑顔で応えてみせる。
お祭りが始まるのは夕方。
もうすぐ、常ノ葉神社の七夕祭りが始まる。