「そう言えば今日は部活、よかったの?」


目を合わせないまま訊ねると、大和は「うん」と答えた。


「頭下げて休ませてもらった」

「ふうん」

「常葉さんにも、俺はたくさんお礼を言わなきゃいけないから」

「ふうん……」


大和には、神社がなくなることも、常葉のことも話している。

だから、どうにか自分にできることをしたくて、今回の七夕祭りを開いたことも。


たぶん、大和が今日無理してまで来てくれたのは、もう一度常葉に会うためだ。

もしかしたらもう会えないかもしれない。それは、口にはしていないけど、心では思ってるはずのこと。

これで最後かもしれないから、もう一度きちんと会うために、大和は今日来てくれた。


カラン、とアスファルトの上で下駄が鳴る。履き慣れないわたしの下駄は、常葉の音とは全然違う。

常葉の足音は、もっと軽やかだった。どこまでも響くみたいなのにうるさくはなくて、何気なく、耳に心地いい音。


「そうだ。常葉さんの好きなおまんじゅう買って行かなきゃ」

「大丈夫だよ。三波屋も焼きまんじゅうで神社にお店出してるから」

「そうか」


当然だ。神様の大好物を、お祭りに出さないわけにはいかない。

三波屋のおばちゃんも快く引き受けてくれた。わたしが頼みに行く前に、たい焼き屋のおばちゃんから話があったそうだ。


「常葉さん、会ってくれるといいな」


わたしに言っているのか、それとも独り言なのか。よくわかんない声色で、大和が呟いた。


「会ってくれるよ、絶対。常葉は、お祭り見に来る」


石コロをまたいでピョンと跳ねた。横から見ていた大和が、「そうだな」と答えた。


空はまだまだ澄んで青い。夜までは、まだあと少し。