炎天下を歩きながら、真昼間に浴衣はきついなとしみじみ思った。水を浴びたい。


「暑い……」

「Tシャツにしたらよかったのに」

「だって紗弥と浴衣着ようって約束したんだもん……」

「でも祭りは5時からだろ? それまでに着替えればいいじゃん」

「一回家帰るのめんどくさいし……」

「じゃあ我慢だな」

「うへえ……」


外の暑さに慣れた大和は、この猛暑でも実に軽快な足取りで進んでいく。反対にわたしは今にも倒れたそうな感じだ。でもおかしいのは絶対に向こうで、わたしの状態が普通なはず。



「そう言えば大和。甲子園、残念だったね」


つい先日、始まった甲子園の1回戦で、大和の高校は負けてしまった。

エースの大和が直前で欠けたことが、最大で唯一の敗因だった。


「みんなは頑張ったよ。今回は、俺がみんなに迷惑かけたせいだ。来年の夏は必ず優勝できるように、俺はこれからみんなを支える」


本当は自分がマウンドに立てたら一番いい。まだその思いはたくさん残っていると思う。

負けて、きっと誰より悔しかったのは大和だ。でもその思いを抱えたまま、次の道へ進んでいく。


「大和ならきっとやれるよ」

「千世の言葉は、なんか頼りないな」

「うるさいな! だったらもう絶対応援しないから!」

「冗談だよ。千世がいてよかった。ありがと」


大和が笑うから、わたしは何も言い返せなくなって顔を逸らした。

ずるい。普段笑わないやつがたまに笑うと、なんだか、それだけでこっちはまるで勝てくなるんだから。