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眩しいくらいの快晴だった。
1週間前からずっと天気予報は晴れのまんまだったけど、それでも心配でテルテル坊主をつくりまくった甲斐があった。
雲はひとつもない。きっと夜になれば、星も花火も綺麗に見える。
みんなの願いも、まっすぐに、高い空へ届いていく。
いとこのお姉ちゃんから貰った浴衣は、大事にタンスにしまってあった。
白地に牡丹が描かれたものだ。帯は、濃いめの紫を選んだ。
それをお母さんに着せてもらったところで、ピンポーンと家のチャイムが鳴った。誰かはわかっているから、それに出るのはわたしの役目。
「いらっしゃーい」
「……どうも」
あ、浴衣かわいいね。くらいのこと言ってくれたらいいのに、相変わらずの無愛想な顔にほとほと呆れた。
玄関先の大和は、どう反応したらいいのかわからないみたいに、とりあえずわたしを見下ろしている。
「……どうよ、わたしの浴衣の感想」
「んん……キレイだね」
「棒読みだけどまあ大和だから合格としよう。すぐに出かけるけど、ちょっとお茶飲んでいったら?」
「うん」
大和を家にあげると、あっという間にお母さんがお茶を、お父さんがお茶菓子を用意し始めた。
お父さんに、
「すぐに出かけるからおしゃべりは短めにね」
と注意しておいて、わたしは自分の支度を進めた。