「場所が常ノ葉神社だってことだから、もしかして千世さんが関わってるんじゃないかって話してたんです」


お母さんが、はしゃぐユイちゃんの頭をポンと撫でた。


「だからユイとふたりでいろんな人に広めておきました。花火大会はすごく混むから、その日は普段出掛けない人も多くて。結構皆さん、気になってくれてるみたいですよ」

「本当ですか? ありがとうございます! すごくうれしい!」

「やっぱり千世さんがやられてたんですね。わたしたちも遊びに行くので、よろしくお願いします」

「こ、こちらこそ!」


ドキドキする。ちゃんと伝わってるんだ。みんな見てくれている。

きっと来てくれる。だから、わたしはわたしで来てくれた人たちを、うんと笑顔にしなくちゃいけない。

神社に来て終わりじゃなく、きちんと楽しんでもらえるように。


「ユイもおともだちいっぱい連れてくから!」

「うん。ありがと。みんなに、七夕祭りだから願いごと考えてきてねって、伝えておいてね」

「たなばた?」

「そうだよ! 常ノ葉神社の神様は夢の神様だから、みんなに短冊で願いごと書いて、神様に伝えるの」

「わかった! ねえ、ユイも書いていい?」

「もちろんだよ。神社で書けるから、明日楽しみにしててね」



手を振ってユイちゃんたちと別れて、それからは走って家まで帰った。


疲れてるはずだけど、そんなのは全然感じなかった。

早く明日になれって、そればっかりを思った。


早く明日になれ。早く始まれ。


そして、見たかったものを見せてあげるんだ。


いつか夢の中で見た光景のような、常葉がとても大切に見つめていたものを。


もう一度、目の前で───