夕方、飾りつけを終えてひとりで家に戻っていた。
少し暗くなってきた道、空はまだ、夕焼け色のグラデーション。
「ちせちゃん」
後ろから声がして振り返ると、いつか常葉の手伝いで出会ったユイちゃんとそのお母さんがそこにいた。
ユイちゃんの腕の中には1匹の黒猫。お母さんが持っているキャリーにも、何匹かうごうごしているのが見える。
「ユイちゃん、久しぶり。その子クロちゃんだよね? クロちゃんも久しぶりー」
「えへへー。こっちにいるのが子どもたちだよ!」
「おお、おっきくなってる!」
キャリーの中でミーミー鳴いてる子どもたち。
前に会ったときはまだ生まれたてでとても小さかったけど、少し見ない間に随分大きくなっている。
みんなクロちゃんみたいに真っ黒で、なぜかおでこに白いブチ。元気に育っているみたいだ。きっと、大切にしてもらっているんだなあ。
「子猫たちの健診ついでに、クロも見てもらっていたんです。元が野良なので、病気とか心配で」
「そうなんですか」
「でも元気だったよー。赤ちゃんたちもみんな元気だって」
「そっか。よかった」
ユイちゃんの腕の中のクロちゃんを、こしょこしょと撫でてみた。クロちゃんはなんだか面倒くさそうに、ニャーと鳴いて目を閉じた。
「そうだ、ねえちせちゃん!」
突然、ユイちゃんが声を上げる。
「明日、神社でお祭りやるんでしょ」
「え……知ってるの?」
「ポスター見たよ!」
にっこり笑うユイちゃんに、「そっか」と気の抜けた返事しかできなかったけど。本当は、叫んで抱きつきたいくらい心の中が湧き立った。
体の芯がブワッと熱くなった感じ。
うれしい。気づいてくれる人はちゃんといたんだ。