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お祭りまで、あと1日。何事もなければ無事にお祭りを開けるところまで来ている。
ステージの骨組みと屋台の準備はできていて、あとは当日にお店の方たちに用意してもらうだけ。
わたしは紗弥や、紗弥のおばあちゃんたちと、笹飾りの準備をしていた。
お社にも飾りを付けることになって、おばあちゃんたちは作業に取り掛かる前に、お社に向かってお参りをしていた。
「常ノ葉さんの神様は、えらく美しい神様だそうだよ」
紗弥のおばあちゃんが言っていたのを聞いて、この中にも常葉のことを見たことある人いそうだなあと思った。
もしかしたら全員、見かけたことくらいはあったりして。
「千世。これ高い場所の方がいいよねえ」
「うん。すごい豪華だね。こんなの作れるんだあ」
わたしは紗弥とふたり、脚立にのぼって2本の笹を、おばあちゃんたちが作ってくれた飾りで装飾していく。
お祭りの主役でもあるこれはめいっぱい輝かせないと。紗弥とふたり、死に物狂いで運びもしたんだし。
「ねえ千世、楽しみだね、明日」
紗弥が、笹の葉っぱの間からひょこりと顔を出す。
「うん、楽しみなんだけど……」
「けど?」
「うーん、ちょっと心配なこともあって」
ひとつだけ、順調に行っているお祭りの準備で不安なことがあるのだ。
「人、来るかなあと思って……」
お祭りはもう、いつでも始められるくらいの段階までできあがっている。ただ、始められはしても、それだけだったらお祭りの成功とは言えない。
たくさん人が来て、いろんな人に楽しんでいってもらわなきゃなんの意味もない。