何言ってんの? かみ? かみって、あの神様?
え、今この人自分のこと神って言った? 聞き間違い? 嘘でしょ?
もしかして流行りの中2病ってやつ? まさか、そう言う人って実在するの?
頭おかしいのかしら。それともわたしが馬鹿にされてるだけ?
「さあ答えろ。今日は大盤振る舞いだ。ただし実現可能なものにしろよ。不可能なものは俺にも聞き届けられん」
「ええ? いや、あの、ええっと……願いって、言われても、なんか、よく、わかんないし」
そもそもあなたの言うことがよくわからないけど。
というのは心の中だけで続けてわたしが答えると、男の人は、ちょっと顔をしかめた。
「お前がわからんでどうする」
「だって、そんなこと、言われたって」
「願いとは、お前が強く望むものだ」
「強く望むもの……」
「そうだ。今この瞬間に欲する何かや、果てのない先に望む、夢」
苦笑いを浮かべていた、奥で。
ちくりと、どこかに何かが刺さった。
その刺激が、体の真ん中で、じわじわと広がっていく。
「……夢だ、なんて、そんな」
すごく嫌な、感覚だった。
体の中の、汚い黒いもやもやが増えていく。
ぐるぐると渦巻いて。
どこからも抜け出せずに、わたしの中を埋めていく。
「千世、お前の夢はなんだ」
──夢。
何度も、言うけど。そんなこと言われてもなあ。
当然みたいに訊いてくるけど、それって、持ってることがあたりまえなのかな。
答えられるのがふつうなのかな。答えられなきゃおかしいのかな。
夢はなんですかって、訊かれて。
答えられないわたしって、やっぱり、ダメなやつなのかなあ。