「あたしも会いたいなあ、千世の神様」


紗弥がぽつりと呟く。


「別にわたしの神様じゃないよ。みんなの神様」

「じゃああたしの前にも現れてくれるかな」

「紗弥のことはきっと大好きになるよ。あいつ、夢を持ってる人のこと好きだから」

「おお。とうとうあたしも神に愛されるときが来たか!」


なんかマジで紗弥って神に愛されてそうだなあと思ったけど、本当に神に愛されてたら赤点なんてとらないから気のせいだった。

でも、世界中に神様に愛されてる人ってたくさんいるけど、神様に呪ったって嘘つかれた人ってきっとわたしだけだろうから、わたしも案外すごいなあって、白あんボールをむしゃむしゃ食べつつ思った。



「じゃ、あたしはもひとつ頼みに行くところがあるから、行くね」


食べ終わった紗弥が、パックをぺこりとへこませて立ち上がる。

空はちょうど今、綺麗に晴れたところだ。


「ん? まだ紗弥にお願いしてたことあったっけ?」

「千世は忘れてるんだよ。ほら、お祭りって言ったら音楽も必要じゃん」


違う、それは忘れてたわけじゃなくて。きっと無理だと思ったから後回しにしていたんだ。

確かに、いつかのお祭りにはあったんだろうけど、今わたしが用意するのは難しそうだから、無くても大丈夫そうなのはとりあえず考えずにいこうって。


「あたしのばあちゃん、篠笛同好会にも入ってんだよね。他の楽器のサークルと一緒によくミニ公演してるから、演奏できるとこ提供したら来るなって言ってもたぶん来るよ」

「……紗弥のばあちゃん、多趣味だね」

「そうなんだよね。笑っちゃう」


紗弥はそう言って、また自転車で颯爽と商店街を駆けて行った。

わたしも立ち上がって、おじさんにお礼を言い、晴れた空を歩いた。