「おじさん。ポスターができたので持ってきました」
「おお、もうできたんだ」
お天気雨に降られながら、どうにかポスターを濡らす前にたい焼き屋さんに駆け込めた。小さな屋根に避難しながら空を見上げると、もうすぐに止みそうな感じだ。
「そこに貼っておくから。あと、知り合いのお店にも貼ってもらえるように頼んでおくから、何枚かちょうだい」
「ほんとですか! よろしくお願いします!」
「うん。あとね、許可は貰えたから、出店のことは全部任せておいて。その辺りは千世ちゃんが心配することひとつもないから」
「はい、本当に、ありがとうございます」
深く頭を下げた。下げるだけじゃ足りないけど。だってお店も忙しいのにここまで協力してもらって、本当に、感謝してる。
おじさんのこと、苦手とか思っててごめんなさい。これからおじさんのこと心の中でイケメンって呼ぶ。
「あ、千世ー!! おーい!」
呼ぶ声がして顔を上げると、紗弥が自転車で走ってくるのが見えた。雨に打たれて「ひゃー!」と叫びながら屋根の下に飛び込んでくる。
「お天気雨やばーい! 濡れちゃったよもう、あはは!」
「お天気雨なんかより見て紗弥! ポスターできたよ!」
「おお、すごいじゃん! 結構目立つね、子どもとか気にしてくれそうな感じ」
「うん。とにかくまずは知ってもらわなくちゃ話にならないから」
「やるだけじゃ意味ないもんね、人が来なくちゃさ」
うん、と頷きあったとき。ふいにわたしと紗弥の間に手が伸びてきた。その手が持っているのはこの店の人気商品(あんこボールというとてもわかりやすい名前らしい)。