腹が立ったのは、それがきっと本心からの言葉だったからだ。

笑顔も、その言葉も、無理して繕っているならよかったのに、常葉は本当に、そんなことを思ってる。


「……勝手なこと、言わないでよ」


手のひらをぎゅっと握った。堪えるため。さっきからずっと、心臓の奥と、こめかみと目頭のあたりが痛いんだ。


「あんた、まだわたしの祟り解いてないくせに! 勝手にひとりで消えようとしないでよ。祟られたまんまで、わたしどうすればいいの」


はじめて会った日にかけられた祟りってやつ。

キスされたかと思ったら実は祟られていたという、一刻も早く忘れたい思い出を、わたしは今も忘れられないまんま。

忘れられるわけがない。こんな、人生に一度の不思議でおかしな出来事を。

生まれてはじめて、神様に祟られた日のことを。


「解くまで消えるな! 勝手なことするな!」

「驚いた。まさか千世、まだそれを信じていたのか」

「は? ……はああ!?」


え、何、どういうこと?


「とびきりの阿呆だなお前。もうとっくに気づいていると思っていたが……」


呆れるというよりドン引いた顔の常葉に、すでに混乱中の頭がより一層こんがらがる。

ちょっと、本当にどういうこと?


「祟りなど、俺がするわけもないだろう。人を見続け守ることが神の役目であるのに」

「え……でも、おでこ、光ってたし」


そうだ。家に帰ってもまだ光ってたんだから。あんな不思議現象が気のせいなはずがない。確かにわたしは、何かをされていた。