「それってつまり……力が尽きるって、どういうこと」


問いかければ、常葉は間を空けることもなく答えた。


「力が尽きればそれが最期だ。この社と共に、俺は消えるだろう」


寂しげな表情はなくなっていた。悲しそうでもなく、怒ってもなく。

あまりにもあっさりと、常葉はそう言った。


あっさりしすぎて拍子抜けするくらいに。でも、わかってる。

消えるって、きっと体が透けてわたしに見えなくなるってこととは、違う。


本当にいなくなるんだ。死ぬのと同じ。

この世からもう、消えて、なくなってしまう。

本当に、なくなってしまうんだ。



「……何それ、そんなこと、おかしいよ」

「いいんだ千世」

「よくないよ! だって、消えちゃうって……常葉は本当にそれでいいの?」


琥珀色の目が、わたしに向く。


「だってそんな……ひどいじゃん。きっと今までいろんなこと頼ってきたくせに、勝手にお参りしなくなって、自分たちの都合でお社壊そうとしてるんだよ」

「だからまた新たに建ててくれる」

「でも、常葉がいなくなるんならなんの意味もないよ! お社だけ建てたって空っぽだったらなんのために建てるの!? こんなの……絶対おかしいよ。常葉はもっと悲しんだり……怒ったりしたって」

「いいんだ、千世」


常葉の首が横に振られた。きゅっと唇を結んだわたしに、常葉は少しだけ微笑んだ。


「俺は、人のために存在する。人のために生まれ人のために働き、そしてそれが俺自身への幸福にもつながる。人が、神を必要とせず自信の力で歩んでいけるようになったのならば、それはそれで、俺にとって喜ばしいことなのだ」