「ねえ、どうするの?」
「何がだ」
「だって神社なくなっちゃうんだよ。どうにかしなきゃ」
知ってて、なんでそんな平気な顔してるんだろ。わたしにだって教えてくれなくて、怒ったり悲しんだりも少しもしなくて。
「別に、社が完全になくなるわけではない」
「そうなの?」
「新しく街ができるから、社はその街の中、こことは別の場所へ移されるのだ。そこへ祀られる」
なんだ……そうだったんだ。
そうだよね。いくらなんでも家を建てるために神社を潰すだなんて、そんなばちあたりなことするはずないし。
……でも、なんだろ。
なんか、ホッとはできない。よくわかんないけど、胸の奥がむずむずするみたいな、まだ、どこかに不安が残ってる感じ。
なんだろこれ。何が、そんなに不安なんだろ。
「でもそうなると、常葉もそっちに引っ越しちゃうんだよね。もしかしたらちょっと遠くなっちゃうかな。自転車で行かなきゃいけなくなるかも」
でもきっとそんなに遠くじゃない。この地域から出るわけじゃないし。
ちょっと引っ越すだけだから、これからも今までどおり通える。会える。くだらないお喋りだってケンカだってできる。
そのはずなのに。
どうしてか。常葉は、じっと黙ったまま。
ほんの少しだけ、ようやく、寂しげな顔をして。