「長いこと来てくれてたお客さんだったからね。やっぱり寂しいわね。それにあの神社にお参りに行く人も、もうそんなにいないだろうし」

「その神社って……この辺りでよくお参りに行ってる人はもういないんですか?」

「そうねえ。昔はいたけど、今はもうね。そのお客さん以外は聞かないわ。随分昔からこの町にある、由緒ある神社らしいけど」


でも、とおばさんが続ける。


「丁度良いと言っちゃえば、良かったのかもしれないわね。最後に神社に通ってたあの人が、この時に亡くなったこと」

「? それって……どういうことですか?」

「町も変わっていくからね」


首を傾げると、おばちゃんは大きなため息を吐いて「しょうがないことだけど」と苦笑いと一緒にこぼした。

そうして、こう答える。


「その人が通ってた常ノ葉神社、もうすぐなくなっちゃうのよ」



───ぽかんと、一瞬頭が真っ白になる。


「……え?」


ちょっと待って……。今、なんて言った?

……なくなる? 神社が?

それって、どういうこと。


「土地開発が進んでてね、千世ちゃんの家がある南の地区が終わったから、次は東側を新しくしていくみたい。この商店街より向こう側は、かなり古い街だから」

「…………」

「あの神社も随分古いし、参拝する人もいないからって、全部壊してあの一帯、大きい道路つくったり住宅街にしたりするんだって。って千世ちゃん大丈夫? 顔真っ青だけど」


大丈夫、と、たぶん答えたと思うんだけど、実際よくわからない。

全然大丈夫じゃなかったし。頭こんがらがってる。

え、どういうこと?