「ばあちゃんが言ってたんだよね。あそこは知る人ぞ知る超穴場スポットだって」


なるほど、確かに、あそこでやるお祭りに合わせて花火を打ち上げてたんだから、あの神社からならどこより綺麗に見えるかも。

それに、あの神社には寂しがりの神様がいる。そいつは、わたしが花火を見に行ったなんて言ったら「俺も誘え」と拗ねそうだから、紗弥も一緒になって神社に行けば、きっと寂しくはないはず。

賑やかで楽しい町の中で、ひとりだけっていうのは、ちょっと悲しいし。


「うん、そうしよ。商店街でおやつ買い込んでから」

「おお、いいねえ! 花火パーティー! 神崎くんも呼ぼうよ」

「ううーん……来てくれたらね……」


まだわかんないのに、やった! と紗弥はうれしそう。たぶん来ないと思うよ、なんて言えないから、ひとまず苦笑いだけ浮かべておいた。あんまり期待はできないけど、とりあえず、誘うだけ誘ってみよう。

そう。あと、常葉にも伝えておかなくちゃ。神社に人が来るって言ったらきっと常葉は喜ぶはず。

紗弥のことも気に入るだろう。甘いお菓子も夢もセットで、常葉はたぶんめいっぱい、うれしそうな顔をするに違いない。



「じゃあ千世、またね」

「うん。ばいばい」


手を振って紗弥と別れた。神社に行くために、通ってきた商店街からそのまま裏路地へ。

でも、路地に入る前に、ふと。そう言えば最近おまんじゅうを買っていってあげてないなあと、唐突に思い出して足を止めた。


「……今、たい焼き食べたとこだけど、まあいっか」


大和のことのお礼も兼ねて、久しぶりに好きなもん食わせてやろうかな。

そうして、来た道をUターンして、常葉の大好きなおまんじゅうが売っている三波屋まで戻った。