だけどあんまり嫌な感じじゃない。
だって晴れの日もあれば、こうやって雨の日だってあたりまえにあるんだから。
そのうち晴れる。それもあたりまえ。
「ねえ、大和が常葉にありがとうって言ってたよ」
常葉を見ると、常葉は空を見上げていた。この横顔の角度、よく見る角度だ。
「そうか」
「今度、三波屋のおまんじゅう買ってくるってさ」
「いいことだ」
どこから来たのかお賽銭箱の上に小さなカエルが乗っていた。あごのあたりがぴこぴこと、リズムよく動いている。
「なんかわたしさあ、常葉のこと、ちょっとすごいなあって思ったんだよね」
常葉がこっちを見た。相変わらず何考えてるんだかわからない顔をじっと向けてくるから、なんだかおかしくてプッと吹き出しそうになる。
「わたしさ、大和に伝えたいことが何か全然わかんなくって、大和が泣いてても何もできなかった。せっかく走って追いかけたのに、なんの役にも立たなくてさ。常葉には怒鳴っておいて、自分こそふざけんなって感じ」
「確かに怒鳴られたのは少ししょげた」
「ごめんて。あのときは本当にムカついたんだもん。でもさ、常葉は結局、大和を救ってくれたんだよね。わたしには言えなかったこと、大和がもう一度ちゃんと立ち上がるためにはきっと必要だった言葉、常葉が言ってくれたから、大和は今また頑張ろうとしてる」
「大和が頑張っているのは俺の力じゃない。大和の力だ」
「そうだけど……でもやっぱり、常葉がしたことはわたしにはできないことだったから」
結局何もできなかったあのとき。何を言えばいいのかなんて全然わからなかった。
たぶん、大和が今、どんな気持ちなのかが、わたしにはわからなかったからだ。夢をなくしたことなんてないから、気持ちをわかちあえなくて、何も言えなくなった。