不思議なくらいに惹きつけられた。おんなじ人間とは思えなかった。

こんな人見たことない。

それくらい、魅力的な姿をしていた。


あまりに自分と違いすぎて、うらやましがることも忘れるくらいだ。

これだけ綺麗なら人生渡るのも苦労少なさそうだなあと、ぼうっと、その横顔を見つめていたときだ。


「どうした?」

「うぇっ……!」


ふいにその人がこっちを向いたから、とっさに変な声が漏れた。

止まりかけた心臓が反動でバクバク騒ぎ出す。


「なんだ? 何かあるのか」

「い、いえ……別に、あはは、はは……」

「何か愉快なことでもあったのか。いいことだ」

「あ、あの、えっと、そうですね、あは……」


見惚れていました、なんて言えるか。

うーんしかしこれはこれでチャンス。ここから会話を弾ませれば気まずさをぶち壊せるかもしれない。


さあ、どうするか。と意気込み、かつなんでこんなに頑張らなきゃいけないのかと疑問にも思いつつ。

自分のお腹の虫が鳴きかけたことで、ハッと思いついた。


「……あの、よければ、どうぞ」


カバンの中から取り出した袋。さっき買ったばっかりの、下校途中のわたしのおやつ。

ひとつは食べてしまったけれど、中にはまだふたつ残っていた。

三波屋の、おまんじゅう。


「甘いもの苦手じゃなければ、一個、どうぞ」


自分の分を取ってから、袋ごとその人に差し出した。


男の人は、きょとんとその袋に目を向けて。

そして見る見るうちに眉間のしわを深くしながら、わたしの顔を見つめた。