「…………」


それからはじっとふたり、並んで座ったまま。

どこでもない場所に、わたしは視線をうろうろさせるだけ。


雨は降り続けて、制服はべとっとして。心はそわそわと、落ち着かない。


さていつまで、こうしていればいいのかな。

てかなんでこの人、わたしの隣に座ってるんだろう。隣に来た割に、ぜんぜん喋ってくれないし。

この神社の人なのかな。それともわたしと同じで雨宿りしに来た人?

どっちでもいいけど、とにかく。なんなんだろ、この状況。


言いにくいけど、非常に、非常に、気まずい。


「…………」


じわりと、手のひらに嫌な汗を掻き始める。

雨は、小降りになるどころかどんどん勢いを増していた。遠くの空まで真っ黒だ。

当分、小降りにすらなりそうにない。


気づかれないように小さな息を吐いた。

そうして、横目で、隣に座る人を見上げる。


おかしな人だった。

髪は白に近い銀色(ビジュアル系バンドの人みたいな)でもその割に着ている服は和服だ。

わたしが夏祭りのときにだけ浴衣を着るような取って付けた感じゃなく、日頃から着慣れているような雰囲気。


それでいて、ちょっとびっくりするくらいに、見たことのない綺麗なお顔をしている。

少し年上っぽい、男の人。


男の人なのに肌は白くて毛穴ひとつ見当たらないし、鼻は小さくてすっと伸びてて、切れ長の二重は絵に描いたみたいだ。

瞳の色が、べっこう飴みたいに明るかった。べっこう飴って、言い方悪いかな。なんだろう、琥珀、みたいな。

カラコンかな。でも違和感がまったくないから、生まれつきなんだろうか。

顔つきは日本人だけど、もしかしたらハーフとか、クォーターかもしれない。