「痛いぞ千世。何するんだ」

「ちょっと、絶対に大和に変なこと言ったりしたりしないでよね」

「変なこととはなんだ?」


ぼそぼそ常葉と話していると、大和が不審そうな目を向けてきたから慌てて笑ってごまかした。

大和はどうにも腑に落ちなさそうなまま、ちらっと常葉を見上げて、それからもう一度わたしを見る。


「千世は、なんでこの神社でボランティア始めたんだ?」

「えっと……それは」

「千世に夢とは何かを気づかせるためだ」


答えたのは常葉だった。わたしがぎょっとしたのには、常葉は当然気づかない。


「夢?」

「ここは夢の神の社だからな。それなのに千世は夢など無いと言うのだ。だから千世が夢を知るまでここで働かせてやっている」

「そうなのか? 千世」


大和が疑わしげに訊いてくる。


「ん、まあ……そんな感じ」


少なくとも嘘は吐いてない。


「だが大和。俺は千世のことは正直、なんだこのつまらないボンクラはと思ったが」

「はあ!?」

「お前のことは好きだぞ。お前は、とても大きな夢を持っている」


ピタリと、常葉を殴ろうとしていた手を止めた。殴るのをためらったわけじゃなく、大和の顔つきが、変わったせいだ。


何? わたしが拳を振り上げたのがそんなに驚いた?

いや、違う。なんだろ。急に。

なんで常葉の言ったことに、そんなに、顔を強ばらせているんだろ。