「この辺りは、静かだな」

「向こう側に商店街があるんだけど、こっちはほとんど人通らないから」


お昼過ぎ、大和とふたりでいつもの道を歩いていた。

一番暑い時間帯に出てきちゃったのは失敗だったなあと思ったけれど、わたしが大いに寝坊したせいだから仕方ない。


「こんなところに神社なんてあるのか」

「わたしも見つけたのはつい最近なんだよ」


商店街の裏側の、人通りのない細い路地を歩いていくと、垣根の中に高台へ続く石段が見えてくる。

そこをのぼっていくと、この町を見下ろすようにある小さな神社に辿り着く。


四方の鮮やかな緑の中でも、ひときわ大きい正面のくすのき。それを背にして建っているお社に、今日ものんびり座っている綺麗な人。


「常葉」


石段の一番上に足を置いて、お社に向かって声をかけた。

気づいてこっちを向いた拍子に、銀色の髪が少し揺れる。


「遅かったな、千世。そいつは誰だ?」

「ん?」


常葉の目線がわたしの隣に向いていた。わたしの真横にぴたっと立った大和は、じっと睨みつけるみたいに常葉のことを見ている。


「ああ、大和だよ、わたしの幼なじみの。大和、あの人は常葉って言って、えっとー、この神社の人」

「おお、お前が噂の大和か」


噂のかどうかは知らないけど、なんだか常葉は大和に会えてうれしそうな顔。

反対に大和は、明らかにいぶかしげな表情で、常葉のことを心底怪しんでいる様子だ。