「大和、明日まだ、すぐには帰らないでしょ」
つむじの辺りをぷつっと押すと、嫌がっているのか丸い頭がもぞっと動いた。
「……たぶん」
「だったらちょっと、わたしに付き合ってよ」
「いいけど。どこか行くのか」
「うん。わたし今、ボランティア活動やってんだ」
「へえ。どんな?」
「神様のお手伝い」
大和の顔がこっちを向いた。今度はちゃんと、目を合わせている。
「なんだそれ。千世、変なオカルト集団にでも入ったの?」
「違うよ。うーんと、神社のお掃除とか、そういうの」
「ああ、そうか。なんだ、安心した」
「あんたに心配してもらうようなことはしてないよ」
「でも千世は小さい頃から、よく突拍子もないことするから」
「したことないし」
「よく言うよ」
なんだかバカにされた気がしてムカついたので、おでこをチョップしてから布団にもぐりこんだ。
下から「いたた……」と声がしたけど、無視して大きなあくびをかます。
「おやすみぃ」
「おやすみ」
ゆっくり目を閉じた。真っ暗闇に包まれたら、あっという間に眠りに落ちてく。
夢を見る寸前の、ぼんやりとした頭の中で、大和の声で、何かが聞こえた気がしたけれど。何と言ったのかはわからないまま、引っ張られるように意識が消えた。