「俺、ここで寝るの?」
「みたいだね。さっきお母さんが敷いてった」
「……いいの?」
大和が少し、首を傾げる。
たぶん、女の子のわたしと同じ部屋に寝てもいいのかって訊いてるんだろう。
「いいんじゃない? 昔はよく一緒に寝てたし」
「子どもの頃の話だろ」
「大和が嫌なら移すけど。部屋なら空いてるから」
「俺は、嫌じゃないけど」
のそのそと、大和が自分の布団に潜り込む。
仰向けになって、夏用の薄い掛け布団を顎の下まで引っ張りながら、大和は深く息を吐いた。
「千世のおばさんの中で、たぶん俺って小学生くらいから成長してないんだな」
「親ってそういうもんでしょ」
「そうかなあ」
「ねえ、わたしもう眠いから電気消していい?」
「ん、いいよ」
ベッドに横になったまま、たこ糸で延ばした電気のヒモを2回引っ張った。
真っ暗にはならない。豆電球だけはいつも点けたままだから、部屋は薄ぼんやりと茶色く輪郭を残している。
わたしは横を向きながら、じいっと適当な場所を見つめていた。眠いのに、なんだか寝る気にならない。
「…………」
ベッドの端に寄って見下ろすと、大和が仰向けでお行儀よく寝ていた。まだ眠ってはいないだろうけど、瞼はぴったり閉じている。
呼吸の音は聞こえなくて、まるで死んでいるみたい。そう言えばこいつは昔から、本当に死んでるみたいに寝相が良かった。