しばらくしてからお父さんが帰ってきて、4人でいつもよりも少し豪華な夕飯を食べた。

子どもの頃はお互いの家でよくこうしていたけれど、今になって大和と一緒にごはんを食べるのは、なんだかちょっと変な感じだ。


大和の隣に座ったお父さんは、ごはんを食べるのを忘れるくらいにずっと大和に話しかけていた。そのせいか、大和もあんまりごはんを食べられていない様子。

話の内容は当然、ほとんどが野球のこと。大和のことをべた褒めして、ときにはわたしのことを貶して。

今年の甲子園は応援に行くからね、って興奮気味に言うお父さんに、小さく笑って頷く大和の顔を、わたしは冷しゃぶを頬張りながら眺めていた。



そして薄々感付いていたとおり、大和はそのまま泊まっていくことになった。

夕飯を食べ終わる頃にはさすがに外は真っ暗だったし、そんな中よそさまの大事なお子さんを遠くまでひとり帰らせるわけにはいかないと、余計なお世話を働かせてお母さんが大和を無理矢理うちにとどめたからだ。


わたしは、さすがに大和もこれは拒否するかなあと思ったんだけど、意外にも(しぶしぶではあれ)泊まっていくことに決めた大和に、実はかなり驚いた。

だけど本人が良いって言ったのなら、わたしが文句を言う理由もなく。スウェット姿でゴロゴロしながら、1階でお父さんにずっと捕まっている大和が解放されるのを、自分の部屋で待っていた。


そうして、夜遅くになってから、少し疲れた顔でようやく大和が2階へ上がってきた。

パジャマ代わりのお父さんのジャージは、サイズが合わなくてつんつるてんだ。


「おつかれ」

「ああ……いや、つかれてはいないけど」

「お父さん普段話し相手いないから、ここぞとばかりに張り切ってたでしょ」

「まあな。変わらないな、おじさんもおばさんも」


お風呂から上がって、すっかり乾いた髪を掻いた大和が、ふと動きを止めた。

固まったまま、目線はじっと下の方へ。

そこはわたしのベッドの足下。いつも置かれている折りたたみのテーブルはしまわれて、代わりに今は、1組の布団が敷かれている。