「とりあえず、今から家帰るとこだったから、ウチ行こ。ここじゃ暑いよ」

「ん」

「てか、大和って新しい家知らなかったよね?」

「だから近くまで来たけどわかんなくて、ここで途方に暮れてたとこ」

「バカでしょあんた。もう、次からは連絡いれてよね」


歩き出すと、後ろからとことこ大和はついてくる。歩幅は違うはずなのに、わたしに合わせて、大和はゆっくり歩いている。


大和が、わたしが引っ越してきたこの町に来るのは初めてだ。

前に住んでいたところからそう遠くはないけれど、気軽に来れるほどでもないし、ケータイですぐに連絡がとれる分、会いたいなあと思うこともあまりなかった。

それに大和はわたしと違って、いつだって忙しい。


「そうだ。大和、甲子園出場おめでとう」


直接は言っていなかったことを思い出して、振り返った。

大和は、少し間を置いてから、「ああ、ありがとう」と答えた。


「そう言えば部活は大丈夫なの? 甲子園ってもうすぐ始まるんでしょ」

「ずっと練習続いてたから、今は大会前の休み期間中」

「ふうん、そんなのあるんだあ。だったら実家帰ればいいのに。大和の学校って寮でしょ? あんまり帰ってないんじゃないの?」

「家はいつでも帰れるし」

「そういうもんかねえ。ねえ、そのひじに巻いてるの何?」

「サポーター」

「ああ、この間おすもうさんがひざに巻いてた」

「相撲なんて見るの?」

「お父さんが見てた」


どうでもいい会話だなあって、自分でしながら呆れた。

呆れながらもどうでもいい会話を続けて、家までの道を進んでいく。