神社からの帰り道を、ひとりで歩いていた。

日が長いこの頃、今の時間はまだ夕方と言うには早い気がする4時過ぎ。

いつもと変わらない町並みだった。夏休みに入ってからは、子どもが朝から日暮れまでそこら中で遊んでいる。


商店街の裏路地を抜けてから、わたしの家のある新興住宅地まで行くには、1本の川を渡らなければいけなかった。

そんなに立派な川じゃないけど、両岸には土手があって、よく犬を連れたおじいちゃんが散歩をしている。


その川を渡る短い橋。毎日通っている橋だ。

この町に来たばかりの頃は立ち止まって川面を眺めたりしたけれど、今はもう、あまりにも何気なく通り過ぎてしまうその橋の手前で。

ふと足を止めたのは、思いがけない人が、そこに立っていたからだ。


「大和?」


呼びかけると、欄干から川を見ていたそいつが振り向いた。

短い髪と、日に焼けた顔。いつの間にかわたしよりもずっと高くなった背は、最後に会ったときよりも、また少し伸びているみたいだった。

半年ぶりに会う、わたしの幼なじみ。


「……千世」


聞き慣れた声がわたしを呼んだ。大和は、驚いているわたしと同じような顔で、こっちを見ていた。


「ちょっと大和、なんでいるの? 来るなら連絡くらいしてよ」

「悪い。少し前に着いて、今連絡しようと思ってたとこだったんだけど」

「びっくりしたよもう。どうしたの、なんか用事あった?」

「んー、まあ……急に、千世に会いたくなって」

「はあ……わたしってそんなにあんたに愛されてたっけ?」


言うと、無愛想な顔が少しだけ緩んだ。わたしは呆れてため息を吐いて、それから大和の背中をぽんと叩いた。