ひとつには、優しい顔のおじいさんが写っている写真。

そしてもうひとつには、若い男性が写っている、とても古い写真が飾られている。


「あれは?」

「随分違うけど、2枚とも、うちの主人の写真なんですよ」

「ご主人さん、ですか」


ずっと昔のものなんだろう、古い方は随分茶色く変色してしまっていた。

少し見えにくくなった小さな四角の中で、短く髪を刈り上げて、凛々しい表情でこっちを見ている男の人。


「うはあ……イケメンですねえ」

「あらあら、主人が聞いたら喜びますね、千世さんのような可愛い方にそう言ってもらえたら」

「隣のお写真は最近のですか? やっぱり、若い頃の面影残ってますね。素敵な人だなあ」

「ふふ、そうかしら」


あ、かわいい。

ずっと年上の人に対して失礼かもしれないけど、安乃さんを見てそんな風に思った。

少し照れたような感じで笑うんだ。きっと旦那さんのこと、大好きなんだろうって、その表情だけでわかるような。


「うらやましいです。素敵な旦那さんがいらっしゃって」

「ありがとう。でもね、実は5年前に亡くしているんですよ」

「あ……そうだったんですか……」

「ええ。でもね、大丈夫なんです」


安乃さんと目が合った。

そこにあるのは、わたしとは違う表情のまま。