「驚いたでしょ。短い間で随分痩せてしまって。見せるのが、とても恥ずかしいんですけれど」


骨張った手で、安乃さんが自分の頬を撫でる。

とても、「そんなことないです」とは言えないけれど、柔らかな表情はやっぱり、前に見たときと変わらなかった。


「本当はね、もう随分前からね、体を悪くしていたんです。でも動かないとどんどん悪くなりますから、できるだけ調子のいいときは出歩いていたんですけど、先日、とうとう動けなくなってしまいまして」

「そう、だったんですか。わたし、安乃さんを見てて、体調悪いとか、全然思わなくて……」

「嬉しいことですよ、それは。元気ないなあって思われるのは嫌ですし」


でももう駄目ね、と、安乃さんは呟くように続けた。


「強がって元気に見せるのはもう終わりです」

「そんな……」

「もうね、あとはのんびり、最期を待つだけ」


本当に、まるで、夕暮れでも待っているみたいに穏やかに言うから。わたしは何も言えなくて、無意識に両手を握りしめる。


何て言えばいいか、どうしたらいいか。まるでわからなくて、自分のふがいなさに泣きそうになった。

ああ、わたしって、本当に何もできない。