「うひゃあああ!」とひとりで叫びながらとにかく走っていた。

ローファーの中はすでにぐちょぐちょだ。スカートも腿にくっついて走りにくいし、濡れた前髪が目に刺さる。


もう、ここまで濡れたなら雨宿りなんて意味ないし、家まで頑張ろうかな。

そう思いかけたときだ。狭い視界の端にそれを見つけたのは、本当に、偶然だった。


それは石垣の間の、細い階段。

それは高い石垣の上の方まで続いていて、その先になにがあるのかはわからないけれど、ひとつだけ見えたのは、赤い、鳥居。


「…………」


考えるよりも先に動いていた。

わたしは階段を駆け上がって、その先へ向かった。



小さな神社だった。

少し高い土地にある、木で囲まれた無人の神社。


わたしはそこに一時避難して、雨が止むのを待っていた。

もう十分びしょ濡れだったけど、休める場所を見つけられたのはラッキーだ。


前髪から落ちてくる滴を手でよけた。肌に張りついたブラウスをはがしてリボンをほどいた。

屋根の下に腰掛けて、タオルで適当に体を拭いて、息をつく。


「ふう……しんどかった……」


ちょっと落ち着いたところで、首にタオルを掛けたままあたりを見回してみた。

本当に狭い神社だ。鳥居をくぐった先には、短い参道と手水舎、そしてこの本殿しかない。


「知らなかったなあ」


こんなところに、神社があったってこと。

最近は毎日前の道を通っていたのに、まったく気づかなかった。


地元の人しか知らないような場所なんだろうか。

……ここの寂れた雰囲気を見れば、地元の人も、あんまり来てなさそうだけれど。