そこは商店街を抜けて、古い昔からの家が並ぶ住宅街。

わたしの家がある新興住宅地とは随分雰囲気の違うその場所の、あるお宅の前で、わたしは足を止めた。


大きな門構えとその奥の建物は、相変わらず、ため息が出るほどに大きくて。

ぼうっと突っ立ってそれを見上げるわたしは、なんとも場違いな気がしてならない。


安乃さんのお家の前。


「…………」


て言うか、なんで来ちゃったんだろう。

最近見かけないのが気になって、どうしたんだろって考えていたら、いつの間にかこんなところまで来ちゃっていた。

や、押し掛けるつもりなんてなかったんだけど。本当に。

そんな気になったくらいでお宅訪問するほど仲が良いわけでもないし。常葉ならともかく、わたしは、ほんと。


「…………」


とりあえず、帰ろうかな。ここにいると不審人物みたいだし。

うん、帰ろう。暑いし、コンビニでアイス買って帰ろう。


と、くるっとかかとを回した瞬間。


「あら、千世さん?」


声がして、そのまま1回転する形で振り向いた。