「……そう言えば」


誰も来ないなあと考えていて気づいた。そう言えば最近、安乃さんを見ていない。

たぶん、前に安乃さんの家の前で会ったのが最後だ。あれ以来見ていないから、本当に、結構長いことここには来ていないはず。


「…………」


いつもよく来てたみたいだけど。これだけ来ないってことは、何かあったのかな。

単純に、忙しかったり、来るのがめんどくさかったりするだけかもしれないけれど。

でも、そんな理由で、来なくなる人じゃない気がする。


『千世さんがいてくだされば、賑やかでいいわね』


もぞもぞ動くと、サンダルの下で砂利が鳴った。

それが響くくらい静かだったけど、すぐ近くにとまったセミのせいで、耳が痛いくらい辺りがうるさくなった。


境内の小さな場所で、ひとりで座っているわたし。

常葉は、姿を見せようとしない。


「……よいしょ」


立ち上がって伸びをした。

まだ高い場所にある太陽を、手でひさしを作りながら見上げて、参道の真ん中を通りながら鳥居をくぐった。