英語の教科書を取り出して、瀬戸山と勉強に取り掛かる。
人に教えるって初めてで……どうしたらいいのかよくわかんないけど、大丈夫かなー。
例文を一緒に訳しながら、単語や文法を説明していく。
英語ってほとんど暗記だと思うんだけど、こんな説明でわかるのかな。
「あーわかった! なるほど!」
ぱあっと明るい笑顔を向けられて、ほっとするよりもさきに、胸が大きく高鳴った。
その笑顔は、反則だ……。
いつもの笑顔よりもすごく子供っぽい笑顔で、黒縁メガネに不釣合い。だけどそのギャップが余計に笑顔を眩しくさせる。
こんな、屈託のない笑顔を向けられると、どう反応すればいいのか。
「どうかした?」
「や、なんでも!」
至近距離で覗きこまれて、ずさっと体を反らした——と同時に“コンコン”と部屋にノック音が響く。
「お邪魔しまーす」
ドアから顔を出したのは、さっきのかわいい瀬戸山の妹。
お盆を手にして、ニコニコしながら部屋に入ってくる。
「なんだよ」
「お兄ちゃんダメだよ、彼女が来てるんだから、おもてなししなきゃ! あ、はい、えーっと、希美さん? 紅茶でいいですか?」
「ありがとう」
瀬戸山に頬を膨らまして、私を見るなり満面の笑みを作った。
お盆からグラスに入った紅茶を机に置いて、最後にお茶菓子。「こんなんしかなくて」とちょっと恥ずかしそうにしていた。
多分、このくらいの年の女の子だったらクッキーとかが好きなんだろう。だけどお茶菓子は個包装のおまんじゅう。
「ありがとう、私あんこ大好きなの」
「よかったー。あ、私、瀬戸山美久って言います」
「美久ちゃんかーよろしくね」
ニコッと笑うと、美久ちゃんはちょっと頬を赤くしてはにかんだ。……可愛すぎる!