今日はアクション映画なんだなあ。確かに瀬戸山にはアクション映画のほうが似合う。

恋愛映画だったら寝てしまいそう。

待ち合わせ場所に向かいながらそんなことを思う。

一度行くと言ってしまった手前断れることもできず結局日曜日。私っていつもこんなかんじだ……。

まあ、優子も楽しみにしているし、一緒にいる私が憂鬱な顔してるわけにもいかないよね。

そう言い聞かせていたけれど……。

電車のガラスに映る自分の服装に恥ずかしくなってきて、今から帰ってやっぱりいつもの格好に着替えたくなる。

いつもはお団子にしている髪の毛をおろしていて、うっすらと化粧をしてみた。あまりやったことがないからうまくいっているのかわからないけど、唇には薄いオレンジのグロス。

一目惚れして買ったけど、もったいなくて使っていなかったグロス。

普段はめったにはくことのないスカート。お気に入りのブーツにジャケット。


……なんでこんなに気合入れてるの!


移りこむ自分に思わず突っ込む。選んだのは私だ、わかっている、わかっているんだけど。

服を選ぶまで1時間以上もかかったなんて、まるでデートに行くみたいじゃない。矢野センパイとの初めてのデートもこんなことをした記憶がある。着ては脱ぎ、着ては脱ぎ、の繰り返し。


やっぱり、いつもの格好のほうがよかったかな。

でも、ほら、男の子と出かけるわけだし……優子が可愛くしてきたら私浮いちゃうかもしれないし。

悩んでいる間にも電車はガタガタと目的地に向かっていて、気がつけば駅に到着する。

時間は約束の10分前。

待ち合わせ場所の大きな広場をきょろきょろと見渡してみるけれど、まだみんな来ていないみたいだ。


ひとりで待つと緊張してくる。
ぎゅっとスマホを握りしめて落ち着きを取り戻すようにちいさく深呼吸を繰り返した。

緊張することなんてない。ただ、付き添いで映画に行くだけ。そう、その通り。