1着が?ゴールが?圭吾くんが?
きっと全部だと思う。
0.1秒差でも負けは負け。
あの一番高い表彰台に立って、一番輝いてるメダルが貰えるのはひとりだけなのだから。
「向こうもそう思ってんじゃないの」
「え?」
「0.1秒遅かったら自分が負けてたって」
圭吾くんの中で須賀がどれほどの存在なのかは分からない。だって圭吾くんは一度も須賀に負けたことはない。
それが当たり前で、それが高校生記録保持者のプライド。
だけど今回の大会でなにか爪痕を残したとしたら、それは圭吾くんの余裕を須賀が打ち砕いたってことだけ。
「それ励ましてんの?」
「べつに」
クラスメイトたちは全国大会もみんなで応援にいくぞ!って張りきってた。
夏休み中なのによくそんなに行く気力が湧くよねって感じ。
「まあ、次は絶対俺が勝つけど」
なぜだろう。
期待もプレッシャーもすごいはずなのに、須賀の顔がまるで少年のようにワクワクとしていて。
まるで戦うのが楽しみで仕方ないって顔。
そんなキラキラとした姿なんて、私には眩しすぎて直視できるはずがない。