関東大会の決勝戦。
予選と準決勝を勝ち抜いた8人でのレース。
接戦というよりは須賀と圭吾くんの一騎討ちって感じで会場はその日一番の盛り上がりをみせた。
結果は圭吾くんが1着。須賀は2着。
タイムは圭吾くん52秒63。
須賀は52秒64。
わずか0.1秒の差で須賀は負けた。
「残念だったとか思ってないのに言うな」
あ、バレたか。
だって良かったねはさすがにヘンだし、残念だったねがとりあえず妥当かと思って。
みんな須賀は2着でさぞ悔しがっていると思いきやむしろ逆で、あの記録保持者の圭吾くんと0.1秒差だったことを称(たた)えた。
標準記録を余裕で突破した須賀はもちろん8月の全国大会へ出場が決定したし、本人の気持ちとは裏腹にお祭りモードは続いている。
「3着の人は54秒台だったね」
「ふーん」
下には興味ないって顔。
前に頼まれてタイムを計った時は須賀は同じ54秒だったし、そう考えれば調子はわるくなかったはず。
いや、きっと調子はよかった。だれよりもずば抜けて。
ただ圭吾くんのほうが須賀より上だったってこと。
「見えてたんだけどな……」
須賀は青空に右手をかざして、自分の手のひらを見つめた。