「須賀ってさ……彼女いたことあるんでしょ」

「なんだよ。急に」

知らない。ただなんとなく須賀の背中を見ていたらぽろりと口に出ちゃっただけ。


「中学の時ずっといたって」

「いや、ずっとじゃねーし。一瞬付き合ってすぐ別れたよ。つーかなんで知ってんの？」

「だって圭吾くんが……」

言ったあと、しまったって思った。


これじゃ、なんか須賀に告げ口してるみたいじゃない？

だけど須賀が突っかかってきたのは別のこと。


「森谷と親しいの？」

須賀がなぜか足を止める。


「べつに圭吾くんとは……」

「名前で呼ぶ間柄なんだ」

「なんなの？」

この前鉢合わせして少し話しただけで親しいわけでもなんでもないけど、例えそうだとしても須賀に詮索されたくない。


「俺の状況とかどんな練習してるとか小さなことも言うなよ」

「はあ？言わないし、アンタの練習とか興味ないし」

「お前じゃなくて森谷だよ」

もう、須賀と話してると本当に調子が狂う。

圭吾くんを意識してるのは分かるけど、そんなこと忠告されたくないっていうか。むしろ圭吾くんにどんな練習してるとか知られるのがそんなにマズイの？


「自意識過剰じゃない？圭吾くんは須賀のことなんて気になってないよ」

「おい」

私は毒を吐いて須賀を追い越した。