その日の昼休み。紗香とご飯を食べようとしたらテニス部の仲間たちが紗香を誘いにきた。
私に気遣って紗香は一度断ったけど、その背中を強く押したのは私。
部活の友達関係って大事だと思うから。……って部活もやっていない私が言うセリフじゃないんだけど。
お喋りをしないせいか、おにぎりふたつはすぐに食べ終わってしまった。
教室ではもちろんみんなグループで食べていて、私がひとりだからと言って誘ってくる人はいないし、きっと寂しそうとか思われてそうだけど全然平気。
むしろ大勢の友達なんていらない。
こういうところが強がって見えるのかもしれないけど、今は紗香だけいてくれたらそれで十分。
でもまさか紗香が競泳ファンだったなんて……。
水が怖いなんて余計に言えなくなっちゃったよ。
「あれ、須賀は?」
そんなことを考えていると教室に社会科の先生が入ってきた。
この社会科の先生は部活の顧問を担当してなくて、課題や小テストを定期的に出してくるぐらいけっこう厳しいし、怖い。
だから他の先生と違って寝てるだけの須賀をよく思ってないことは顔に出ている。
「これ、昼休みが終わるまでに書いて職員室まで持ってくるように伝えろ」
なぜか矛先は隣の席の私へ。
「……昼休みってあと10分しかありませんけど……」
これって前回出された課題じゃん。
こんなの30分でも終わらなかったのに。
「出さないヤツが悪いんだよ。いいか。必ず須賀に伝えろよ」
「………」
だから、なんで私なの?
絶対ムリなのに、私が伝えなかったら私のせいになるじゃん。……もう、本当に面倒くさい。