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次の日。気温がどんどん上がっていく3限目にまた私の大嫌いなプールの授業。ピッピッと先生の笛の合図とシンクロして準備運動がはじまった。
そんなクラスメイトたちの姿を私は今日も木陰で見つめるだけ。
私が溺れかけて須賀が助けてくれたあの日から、私に対しての女子たちのからかいは少なくなった。
といっても須賀がいる前では控えようとしているだけで、女子更衣室では「毎回見学の人は気楽でいいよね」なんて嫌味を相変わらず言われたけど。
私が反発したり言い返したりすると倍になって返ってくるのに、須賀が女子たちを一喝しても嫌われることはない。
むしろ「今度泳ぎ方教えてよ~」なんて女子に囲まれてるし、それは須賀の人柄なのか、それともその才能に惹かれているだけなのかよく分からない。
「今日は背泳ぎの練習するからなー!」
先生の言葉にみんなが反論。
「背泳ぎなんてムリ」「難しすぎる」なんて、やる前からみんな諦めモード。
「じゃ、お手本に須賀。背泳ぎで25メートル泳いでみろ」
「え、いや俺クロール専門なんすけど」
「25メートルならいけるだろ」
「まあ……」
そんな先生の提案にみんなの態度がころっと変わった。「須賀の背泳ぎ見たーい!」とプールサイドが盛り上がる。
はあ……。授業がはじまってまだ10分しか経ってない。
どうしてプールの授業はこんなに時間が長いんだろう。