そんなことを考えながら、ゆっくりと帰っていると、制服のポケットの中がやけに軽いことに気づいた。

……もしかして……と、確認すると予想どおりスマホがない。

やっちゃった。教室の机に入れっぱなしだよ。


もう戻るには面倒なほど歩いてきてしまったけど、盗まれたりしたら大変だし私は仕方なく方向転換して学校へと急いだ。

はや歩きで教室に向かってスマホを見つけた頃には、窓の外は夕暮れよりも暗い時間になっていた。

紗香と時間が合えば一緒に帰ろうと思ってたけど、途中で帰宅するテニス部の部員とすれ違ったし、紗香も帰ってしまったかもしれない。


……まあ、いいか。

どうせ今日はお母さんとお父さんは仕事で帰りが遅いって言ってたし、急いで帰ったところでなにかやることはない。


――バシャッバシャッ。

雨が降ってるわけでもないのに水の音がする。

それは室内の水泳プールの中から。


学校の建物からは次々と電気が消えていくのに、ここだけはまだ明るい。

部活動に力を入れている学校だけど、この水泳部の建物は敷地内にあるどの施設より立派な気がする。

体育館より広い気がするし、水泳部員にとって泳げる環境が全て整ってる感じ。