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須賀は記録を更新。

優勝とともに現日本高校生記録保持者となった。

そのあと表彰式で一番高い場所で金色に輝くメダルとトロフィーをもらって、ずっと会場の拍手は鳴りやまなかった。


「もうヤバいよ。本当に感動した!」

ロビーに集まったクラスメイトたちはまだ興奮が冷めていなくて、先生なんてまだ泣いている。


須賀はこれじゃ終わらない。

きっとすぐに次のことを考えて、もっと大きな夢に向かってまた明日からも泳ぎ続けるのだろう。


「すず、どこ行くの?」

「これ捨ててくる」

紗香にそう言ってひとりでロビーを離れた。

大声を出したから喉がカラカラでペットボトルの飲み物を一気に飲んでしまった。


会場のスタッフや関係者は片付けの作業をすでにはじめていて、なんだかあの瞬間が夢だったみたい。

だけど、夢ではない。

須賀は本当に本当に男子自由形の高校生チャンピオンになったのだ。


「……あ」

ゴミ箱を発見してペットボトルを捨てたあと、前方から歩いてくる人影が見えた。


「久しぶり」

それは圭吾くんだった。