「じゃあいくよ。さいしょはグー、じゃんけんぽん」
ハナの声に合わせて同時に右手を出した。
あいこにはならずに最初で決まる。ハナはグー。わたしはパー。
「やった! わたしの勝ちだね」
「あ、残念だなあ。最初は勝ちたかったのに」
「ぱ、い、な、つ、ぷ、る」
ハナを置いて、パーで勝った6段分、上へと向かう。
両足をピタリと止めた先で振り返ると、悔しそうな顔でハナがわたしを見上げていた。
「セイちゃん、次は俺が勝つよ」
「あ、わたしがじゃんけん強いことを知らないな」
「俺だって強いということを教えてあげる」
「負けたくせに」
「だから次は勝つって」
ハナがグーを突き出すから、わたしも負けじと突き出して。
「さいしょはグー!」
ふたり同時に、声を上げた。
何度もじゃんけんを繰り返して、少しずつ少しずつ進んだ階段のゴール。
それがようやく目の前に来た今。ハナはあと9段でゴール。そしてわたしは、ハナの3段下。
現段階では負け中だ。でもまだ結果はわからない。
「あと2回勝てば俺の勝ちだね」
「くっそ……絶対負けない」
同時にこぶしを向け合って「さいしょはグー」と呟いた。
大きく腕を振りながら、無意識で、手を開く。
「じゃんけんぽん!」