なんだか、ハナの意外な一面を見たような気がした。
どっちかって言わなくても穏やかで、マイペースなハナだけれど、お兄さんと喋っているハナはちょっと違ってる。
わたしの前のハナももちろん素なんだろうけれど、それとは違う部分も自然と出てるみたいな。それくらい、ハナとお兄さんは近い場所に居る。
家族なんだなあと思う。
少しだけそれが、うらやましい。
「…………」
じっと、無意識の中でふたりを眺めていたら、ハナがそれに気付いて、ばつが悪そうにわたしに笑った。
恥ずかしいことなんてないから、そんな顔をしなくてもいいのに。
そう思いながら、でも、ハナの珍しい表情を見れたことが嬉しくて、わたしも小さく笑い返した。
「そうだ、セイちゃん帰らないといけなかったね」
ハナが空を見上げる。さっきよりもまた暗くなっている景色。
もう少しすれば星も見えだしてくる暗さだ。
「気を付けてね」
「うん。じゃあ、失礼します」
お兄さんにもう一度頭を下げて、鞄を肩に掛け直した。
そして歩き出そうとしたところで、でも、「あれ?」というお兄さんの声に足を止める。
「送っていかないのか? もう暗いのに」
「んー、セイちゃん、ひとりで大丈夫って言ったけど」
「なに、毎日ひとりで帰ってるの?」
「あ……えっと……」
ちらりとハナを見ると、ハナも、いつもはどうしていたっけ、という感じで首を傾げてわたしを見ていた。
「いつも、ひとりで帰ってますから。大丈夫です」
「でも今日は俺も居るし。いいよ、送ってく。なあハナ」
「い、いいです!」
つい、声を上げてしまった。