「セイちゃん、これ、俺の兄貴」
ハナがその人──ハナのお兄さんに手のひらを向けた。それから次に、わたしにも。
「こちらはセイちゃんね」
「うん。はじめまして、ハナの兄の芳野葉です」
お兄さんがぺこりと頭を下げるから、ハッとして、わたしも慌てて下げ返す。
ヨシノ、ヨウさん。ハナとふたりで葉っぱとお花だ。可愛いな。
「はじめまして……倉沢星です」
「うん、いつもハナがお世話になってます。自分勝手なこいつに付き合ってくれて、ありがとね」
「い、いえ……こちらこそ」
もう一度顔を上げると、お兄さんとモロに目が合った。
ドキッとして、思わずハナの後ろに隠れるように後ずさると、お兄さんはなぜだか楽しげに微笑んでいた。
ハナのお兄さん。
背が高くて、側に来ると随分見上げてしまうけれど、それでも威圧を感じない、ハナと同じ柔らかな空気を持つ人だ。
年上なだけあって落ち着いた感じがあるけれど、やっぱりどこか、外見はもちろん、それだけじゃない部分もハナと似た雰囲気がある。
「…………」
ハナにお兄さんが居ることは、三浦さんから聞いたばかりで知っていたけれど。まさか会うことがあるなんて思っていなかったから、ちょっと驚いた。
でも。
「迎えに来なくていいって言ったでしょ。さすがに俺だって、ここから家までくらいひとりで帰れるよ」
「別に心配してるわけじゃないさ。お前はいつもひとりでふらふらするもんだから、たまには付き合えって思っただけだろ」
「ふらふらなんてしてないよ。今日はちゃんと学校行ったし」
「うん、えらいな。よくやった」
そう言ってわしわしと頭を撫でるお兄さんの手を、ハナは面倒そうに、でも嫌々じゃなく受け入れる。