◇
どっちかが言ったわけじゃない。でもいつからか、どっちが先に来るか、なんとなく、競争するようになっていた。
学校から公園までの道のりは遠い。
徒歩通学のわたしには決して楽じゃない距離だったけれど、一度家に帰ってからとか、今日は行くのをやめようなんて考えは一切浮かんだことはない。
今度から、学校も自転車で通うようにしようかなあ。そんなことを思いつつ歩いていたら、いつの間にか着いていた、いつもの公園のいつもの丘。
「……やった」
頂上を見上げながら、小さな独り言を漏らしてみる。
ハナはまだ来ていない。珍しくわたしの勝ちだ。
相変わらず何にもないこの場所に、人の姿はまったくなかった。
エンジン音とか電車の音とか、街のざわめきは近くにあるのに、ここだけ世界から切り取られたみたいに静かだ。
不思議な気がした。でも心地良かった。
わたしはひとつ息を吸って、短い芝の上をのぼって行った。
「んー」
小さな丘の上でぐっと伸びをしてみる。
空に向かってパーに開いた手のひらの向こう、今日は見事な快晴だ。
渇いた地面に腰を下ろした。足を芝生がくすぐって、少しこそばゆかった。
でもそれもすぐ慣れる。
風が、気まぐれにどこかへ吹いていく。