「……芳野先輩ってさ」


わたしの顔を見て、三浦さんが少し困ったように眉を下げる。


「そういう事情もあって目立ったからね、学校ではよく目に付いたけど、障害のことなんて知らなきゃ本当にわかんないくらいいつもすごく楽しそうだったよ。でも反面、よく早退したり、休みがちでもあったみたいだけどね」

「今でも、高校よく休むんだって」

「そうなんだ。あはは、なーんか全然変わってなさそう」


表情を変えて明るく笑う三浦さんには、嫌味も同情もひとつもなくて、やっぱりハナと仲良くなれそうだなあ、なんて思った。

それから、こういう人たちばかりが、どうかきみの側に居てくれたらって。


「どんな人なのかなあ。ちょっと気になるな」


三浦さんが頬杖を突く。


「ハナのこと?」

「うん。なんか思い出したら、気になった。本当はどんな人なんだろうってさ」

「どんな人、か……」

「そ。て言うか、なんだろ。倉沢さんが気にしてる人がどんな人か興味がある、って言う方が、近いかな」


にいっと唇を持ち上げて、三浦さんは上目でわたしを見上げた。

まるい大きな瞳は、まさに楽しげで、それでいて、悪戯気。


「なんか進展あったら絶対教えてね」

「だ、だから……わたしとハナは、そういうのじゃないって……」

「はいはい。あ、そうだ、倉沢さんってもう原付持ってる?」

「え? う、うん……持ってるけど」


なんだかうまい具合にかわされてしまったみたい。

追及されたくもないけれど、こんな中途半端に誤解というか、変な解釈をされたままなのも困る。

かと言って、もう面倒で、言い返す気にもならないけれど。

苦笑いを零しながら、わたしは小さく息を吐く。