「また、明日も会える?」
唐突な問い掛けに、ちょっとだけ目を丸くした。
でも、それの答えはもう決まっていた。
「さあ」
適当な返事。だけどハナは、あの日と同じ、嬉しそうな顔。
「セイちゃん俺より早く来てそうだなあ」
「さあって言ってるじゃん。来るかわかんないよ」
「そうだね。わかんない。会えたらいいね」
のんきに笑って、そんなことを言うから。もうわたしは何だって言い返せない。
案外自分勝手なきみの、言葉と笑顔に、乗せられっぱなしで。
「さて」
ハナが立ち上がる。わたしはそれを見上げている。
揺れるふわふわの髪。太陽できらきら光る。
3段下りて振り返ったきみ。その姿が眩しくて、わたしは咄嗟に目を細めた。
首から下がったカメラが揺れていた。
レンズはこっちを見ていたけれど、もうわたしを勝手に焼き付けたりはしなかった。
ハナの手が、向けられる。
「行こうか、セイちゃん」
わたしは立ち上がらないまま「どこへ」と訊ねた。
「どこへ行こうか」訊いたのに、返ってきたのはまた問い掛けだった。
少しだけ、膝におでこをつけて、ハナが見ていないところで笑う。
それから立ち上がって、向けられたままの手に、自分の手を重ねた。
「行こう、ハナ」