ぎゅっと、手のひらを握り締める。何もつかめない、心許ない小さな手のひらだ。
確かにここにある“今”にさえしがみ付くことができない、だめな、わたしの。
「……わたしは」
だめなんだ、わたしは。
どうしようもないよ。わかってたってなんにもできない。
あのときに戻れたらって、もうなくなってしまったものにばかり縋りついて。今の自分が見えなくて、他の何も見たくはなくて。
前も後ろも確かにあるのに。ここに立って、空を仰いでいるのに。
目を瞑って、耳を塞いで、小さくなってうずくまってる。
だって、だってわたしは。
わたしの“今”は、きみとは違う。
きみとは、違うけど。
「…………」
しまった。と思ったのは、今日も何度も聞いていた短い音が聞こえてからだ。
カメラの音。
横を向くと、やっぱり、光るレンズがわたしに向いて、その後ろでハナが楽しげに笑っている。
「おい! 怒るよハナ! 勝手に撮るなって言ったでしょ!」
「言われたっけ、そんなこと。憶えてないなあ」
「……もう!」
また、堂々と隠し撮りをされてしまった。
今回だって絶対に、ロクな顔をしていなかったはずなのに。
「ねえ、セイちゃん」
ハナが呼ぶ。
わたしは返事はしないけど、ふくれっ面のまま、視線だけはハナと合わせる。