「手伝ってあげたいけど、なかなか難しい」
「えっと……大変って、いうか……」
呆気にとられた。そんな言葉が、返ってくるなんて思わなかったから。
優しい言葉を欲しがったわけじゃない。妙に気を遣われるのは嫌だから、馬鹿にしてくれるくらいで丁度良かったのに。
初めて言われた、そんなこと。
手伝ってあげたい、とか。大変とか。
宿題を溜め込んでるわけじゃないんだし、ふつうはそんな言葉を選びはしないのに。
だけど……なんだろうな、その言葉。
他の誰かが何度もくれた、どんな気を遣った丁寧な言葉より、ずっと、楽な心で受け取れる。
なんだか間が抜けてるからかな。言われたらフッと、空気が抜けちゃうような。
よくわからないけど、なんだろう、なんか。
なんか、変な感じ。
「セイちゃんはさ、きっと、俺には及びもしないようないろんなこと、いつも必死で考えてるんだね」
ハナがもう一度立ち上がる。
そして、もうすぐ星が光り出す、半透明の空を見上げる。
「苦しいことがちょっと多いのかな。そういう顔してた。でも、そういう思いばっかり駆け巡ってるからってさ、セイちゃんに綺麗な世界が見えないからってさ。セイちゃん自身が綺麗じゃないとは限らないんじゃない?」
ハナの声は歌うみたいだ。
心地良く響いて、拒否できなくて、あたたかくて、揺るぎない。
だからこそ。
「きみは綺麗だよ。きみが知らなくても、俺が知っててあげる」